6-4. ファージの種類と増殖
https://gyazo.com/c46126ed3d416a19ff66aa9dd02da825
https://amzn.to/2I6DMZu
1) ファージとは
ファージ(phage:バクテリオファージ)
細菌に感染するウイルス
大部分の細菌にはファージが存在し、「天敵」となっている
細菌側も制限修飾系やCRISPR/Casシステムで自身を守っている
10~250 kbのサイズの1種類の核酸をゲノムとして持ち、タンパク質の殻に包まれている
ゲノムには複数の遺伝子がコードされている
大腸菌にも多くのファージがある
多様な形態
オタマジャクシ型のもの
オタマジャクシ型のものの尾部の末端に脚のような繊維をもつもの
分化した構造をもたない繊維状の形態をもつもの
多様な核酸の種類
二本鎖線状DNA
一本鎖環状DNA
一本鎖線状RNA
遺伝子工学で汎用されるのは主にλファージとM13系ファージ
https://gyazo.com/b918ce4b04787ba57aee9de967c00fd5
一般のウイルスと同様に、感染後にファージゲノムの複製、転写、翻訳が起こり、やがて細胞内にファージ粒子が形成され、数時間後には数百個のファージが細胞を壊して出てくる
2) ファージに特徴的な性質
形質導入
ファージによって遺伝子が細胞に移入される現象
レーダーバーグ(ジョシュア・レーダーバーグ)により発見された
https://gyazo.com/bcf306e1e95265befbfc5fc173efda3a
特殊形質導入
ファージゲノムに宿主DNAが組込まれ、感染によって細胞にDNAが入る現象
λファージなどでみられ、導入DNAには感染性と増殖性がある
普遍形質導入
ファージ殻内に宿主の断片化したDNAが入り込み、感染によって細胞に移入される現象
そのようなDNAは感染性をもつが、増殖性はない
P1ファージなどでみられる
溶原化
ビルレントファージ(毒性ファージの意味)
細胞内で増幅して細胞を殺すタイプの通常のファージ
T系ファージはもっぱらこの性質を示す
テンペレートファージ(穏やかなファージの意味)
増殖せず、細胞内に潜む溶原化という状態をとるもの
一定頻度で示すものにλファージやP1ファージ
プロファージ
溶原化している細胞内ファージDNA
3) ファージの検出、定量:プラークアッセイ
ファージの検出や定量はプラークアッセイで行う
原理
ファージ感染菌を平板寒天培地(プレート)に、寒天に封じ込めた状態で播く
感染菌からのファージが周囲に次々拡がり、やがて目で見える溶菌斑(プラーク)が出現する
https://gyazo.com/f4fae45aca4e61d53ce72d450137528f
操作の概要
1. ファージと適当な被感染菌を混ぜ、しばらく保温する
λファージは細胞表面にあるマルトース輸送タンパク質に吸着するため、大腸菌の培養ではマルトースを添加する
2. 軟寒天培地(b)を加え、プレートに重層する
ファージが拡散しやすいように、通常濃度の半分の0.7%を寒天とする
3. 重層培地が固化した跡、一晩培養する
4. 菌が増殖したプレート表面に出た透明なプラークを観察する(c)
ファージ力価(感染性ファージの数)は1 mLあたりのpfu(plaque forming unit:プラーク形成単位)/mLで表す
プラークの数から最初に存在していたファージの個数がわかり、また1つのプラークを純粋なファージ集団として扱うことができる